静岡ビジネス社のビジネスレポート(2007/11/5 1140号)に寄稿したものです。
お題は「わたしの、大切なもの ”思い”」(800字程度)
読みたいといってくださった方が多かったので、期間限定で掲載します。



こもれびの色を織る

先日、本棚の整理をしていたら、一枚の葉が本の間から落ちてきました。
枯れてパリパリになっているに、ちゃんと形を保っているその葉を、多分、十数年ぶりに手にとって眺めました。
まだ葉脈がくっきりと通っています。

「風に舞う落ち葉があまりにきれいで見とれちゃってね・・・」

学生時代、待ち合わせに遅れてきた友人がそう言って私にくれたものです。
その遅刻の理由を、私は読んでいた本に挟んで、そのまますっかり忘れていました。
当時はまだ、紅葉がはじまったばかりで、緑色が残る美しい色だったはずです。
久しぶりに見たその葉は一見、ただの茶色でした。
でもよく見ると濃淡があったり、黄色やグレーなどの細かな筋も通っていたり、決して単色ではありません。
それに、眺めているうちに生命力の残るあの日の色も思い出しました。
若葉の頃はみな同じように溌剌として見える葉も、
紅葉し始めると一枚一枚違う模様になり、まるで人生をみるようです。
目の前にある一枚は、すでに紅葉も終わり、土に戻る前の静かな色にみえました。

そんな葉のイメージが、作品を作るきっかけでした。
目に映る色だけでなく、言葉で表現しきれない部分を何十色にも草木で染め分け、
織り上がった着物に、「こもれび」というタイトルをつけました。

現在、私は染織の道を歩んでいます。
糸をいろいろな色に染めて、機織機にかけて織り、布を作り上げます。
私が一番大切にしているのは染めること、「色」です。
色は隣にくる色によって引き立てあったり、けんかしたりします。
単純な色に見えても、それを囲む空間がある限り、色は常に干渉しあい単独では存在し得ません。
人間関係と似ているなぁと思うこともあります。

そういえばあの時、「どの葉を拾おうか迷わなかった?」と私が聞いたら、
「みんなちがって みんないい、でしょ?」と友人は答えて、「わたしと小鳥とすずと」を諳んじました。
ちょうど今頃のような、枯葉の舞い始めた季節で木洩れ日がとてもきれいだったのを覚えています。

(以下、次回の方に続く・・・)